Hozoin-ryu sojutsu, the art of the spear

対太刀

 太刀相

※参考「寶蔵院流十文字中村葉」

【翻刻】

 太刀相八ヶ條の業ハ、槍を中取にいたす方、利多し。間をつもり、敵の動く処を、挙へからみ突留る事、柄返また鎌の技等肝要なり。

【現代語訳】

 太刀を相手にする形八本の技は、槍を中取でいる方が有利であることが多い。間をはかり、敵が動くところを挙へからみ、突き止めること、柄返(槍の反対側:石突を使う)、また鎌の
技など、とても重要である。

【解説】

 太刀を持った敵に対するときの、基本的な応じ方を示しています。 短い槍といっても太刀に比べれば十分に長いため、臨機に応じられるように、中取の構えを基本としています。
 特に、鎌を使ったり、石突を使用したりと多彩に応じ、変化できることが大切と説いています。

 亂(乱)突

※参考「寶蔵院流十文字中村葉」

【翻刻】

 乱突といふハ、太刀の敵と立あふ時の業なり。敵、此方の槍へ仕寄をつけ入込んと立働く時、敵の両足へかけて極りなぐ散し、敵を迷わせ、虚になりたる所を突て取る事、散して引取方は、敵の架により、右へも左へもひらくなり。鎌を楯にして、打込太刀をうけへし。空突をも度々出すへし。

【現代語訳】

 乱突というのは、太刀を持った敵と立ち合う時に使う技である。敵は、こちらの槍へ仕掛かり間合いに入ろうとしてくるとき、(鎌を)敵の両足へかけて入らせず(敵の攻めを散らす)、敵を迷わせ虚になる(隙ができた)ところを突いて勝つ。敵の攻めを散して間合いに入らせず勝つには、敵の攻め方(間合いの詰め方)によって右にも左にも開く(体をさばく)ことが大切である。また、鎌を楯にして、打ち込んでくる太刀を受けたり、空突き(からづき、牽制のための突き)を度々出すことも大切である。

※架:かかる、かける

【解説】

 この乱突も、太刀を相手にする場合の心得を説いています。相手が太刀の場合、槍の方が間合いが遠いので、間合いに入らせないようにしています。
 具体的には、鎌を相手の足にかけて近づけないようにし、また、相手が惑わされているところを突いて勝つとしています。
 ただ、相手の間の詰め方や動き(攻め)に応じて、こちらも左右に体をさばくことが大切であると言っています。
 また、鎌を盾がわりに使ったり、牽制のための空突きを何度も出したりすることも大切だと説いています。

 芝搦

※参考「寶蔵院流十文字中村葉」

【翻刻】

 芝搦といふハ、太刀を持たる敵に向ふ時、突を出し、其突敵の躰をはつれたる時、其儘鎌にて引かけ引倒し、いかよふにも鎌を働かせ、其場の趣機轉をきかせ遣ふへし。挙襟踵抔へ鎌を
引掛る業、芝搦なり。又、十文字、小乱に散し、敵の目通りへ打かけ散し候へは、少し反所を敵の左のきひすへ横手をかけ、前へ引なり。具足着たる者抔にハ専用の技也。悦眼をおさへ、
足へかけて数を取を芝搦といふ傳も他に有よし。

【現代語訳】

 芝搦というのは、太刀を持った敵に向ふ時、突きを出し、その突きが敵の体を外れた時、そのまま鎌で引っかけ引き倒し、どのようにでも鎌を操作し、その場の状況に応じて機転をきか
せて技を遣うようにすることが大切である。挙げて襟や踵などへ鎌を引っ掛ける技を芝搦という。また、十文字を小刻みに動かし、敵の目通りへ打かけて散すならば、少し返す所を敵の左
の踵(きびす)へ横手(鎌)をかけ、前へ引くのがよい。具足(甲冑)を着たる者などには、この技が特に有効である。(敵の)悦眼をおさえ、足へかけて数を取る芝搦という教えも他にある。

※抔:など

【解説】

 これは、太刀の敵に対し、突きが外れた場合、そのまま鎌をかけて引き切る(引き倒す)ことを言っています。
 特に、どのようにでも鎌(槍)を動かして、機転を効かせて技を使うことが大切だと説いています。
 また、襟や踵などに鎌をかけて引っ掛けたり、敵の左の踵(きびす)へ鎌をかけて引き切ったりすることも有効です。